組合についての講義

フィリピンでは、何事も軽く動く。大きな力が要らない。タイミングが良ければ、何事も簡単に動き出す。日本ではこうはいかない。何事も慎重に丁寧に根回ししなければ何事も動かない。運動方程式に例えれば、質量が小さいから、加速に力がかからないということだろう。だから、止まるときは簡単に止まるし、どこかで、ニュートン則では動かなくなって、一定速度以上にはならないのかもしれない。しかし、この軽さは一つの魅力だ。何しろ、我々は資金力がないから、社会実験をするにも、小さな予算でやらなくてはならないから。

 

今回、こちらに到着した時に、いきなり、二つのことを頼まれた。どちらも事前情報なしだ。一つは、1週間後に、この地域の教育研究機関を集めて、学際的な(inter-disciplinary)研究のためのシンポジウムを数日間やるから、その最初のレクチャーをやってくれということだった。少々、慌てたが、手持ちの材料で、1時間分の講義のPPTのスライドを準備した。ところが、数日前になって、これが延期になった。何でもCPD(Continuous Professional Development)のプログラムとして行って、修了証を出すので、どこかの期間の承認が必要ということだった。

 

もう一つは、CHED(Commission of Higher Education)の資金で、New Washington市の市民を対象に、魚の干物作りの同集会をやるので参加しろということだった。これは、2月にHunet ASAの資金も使って行った牡蛎の燻製とSoft boned milkfishの燻製づくりに続くプロジェクトで、最終的に地域住民による水産物加工の組合のようなものを作って、水産物の付加価値を高め、マーケットパワーを持たせることが狙いである。Hunet ASAの資金には限りがあるから、採取的なところまで、Hunet ASAの資金が支えることは無理だ。どこかで、他の資金で動かすようにしなければならないと思っていた。そうしたきっかけを、小さの資金で作っていくことが、Hunet ASAの役割だと思っている。しかし、わずか2回目で、フィリピン側の公的資金が使えるところまで来るとは思っていなかった。Hunet ASAとしては、まさに狙ったとおりだ。

その内容だが、まず参加者がほぼ2倍になり、参加している人の範囲も、ほぼ、New Washington市の全域にひろがった(前回の参加者は、TambakというBarangayからだけ)。さらに、その内容は、投資についてとか、組合の機能のような話題まで含まれており、私が狙ったストーリーが見事に組み込まれていた。ひょとすると、行くところまで行きつけるかもしれない。何で、こんなに簡単に動き出すのか、キツネにつままれたような話だ。

 

この軽さは、さらに、驚くべきだったのは、今朝、午前1時ごろ、家のドアを叩く音がしたので、目が覚めて、恐る恐る何の用だと訊いたら、今日、イロイロでFuture Earthがやる、地域のsustainabilityに関するWorkshopがあるから、参加してくれという話だった。もちろん、貴方に興味があればという言葉が添えられていたが、興味があればというレベルの話を、真夜中に人を叩き起こしてする人はいない。参加費も宿泊費も負担するからという話で、初めから、私が参加することが前提だ。実際、会場の受付には、私の名前が印刷されたネームカードがあった。いつ、出発するのかと訊いたら、朝の4時だという。だから、まだ眠れると言い訳がついていた。確かに、多少は眠れるが、旅行の準備をして、何とか寝ついて、3時半に起きた、それから、長距離バスで3時間かけて、Iloiloのホテルに着て、今、Work shopに参加している。何か発言を求められると思うので、バスの中で、Sustainabilityについて自分の手持ちの材料を探しておいた。今のところ、公演している人間の話題は私の想像の範囲を超えないから、何か訊かれても何とかなりそうだ。ということで、2日間このWorkshopに付き合う。何か、うまい人間関係が作れれば良いと思っている。

 

いずれにしても、軽く動く世界では、こちらも軽やかに動かなくてはならないだろう。こういうのは、得意分野かな。加速が必要になったら、誰か重量級の力持ちを連れて来よう。