5月上旬までの各国の累積データで陽性者数と陽性者の死亡率、検査数と死亡数の関係を整理しました。陽性者数・検査数は1,000,000人当たりで標準化しました。

図1は陽性者数と陽性者の死亡率(致死率:どのくらいの割合の患者が死んだか)です。患者が増えると医療が圧迫されますから、陽性者と死亡率には正の相関があると予想されます。この図を見ると、先進国では2000人を超えると死亡率の高い国が出現します。この図から、フランス、ベルギー、スエーデン、スペイン、イタリア、英国、オランダが医療崩壊国、アイルランド、米国、イタリア、ポルトガルが準医療崩壊国となります。普通の状態だと致死率は0.05ぐらいとされていますから、この見方は妥当でしょう。

2.は検査数と死亡数の関係です。検査数を巡って検査数増大派(検査を増やすと死亡数・死亡率が下がる)と抑制派(むやみに検査すると医療崩壊し死亡数が増える)の論争がありますが、実は全く意味のない議論です。どちらも観念論に過ぎず実態を見ていないのです。抑制派の説に従えば、検査数を増やすと死亡数が上がるという正の相関があるはずです。強い相関ではありませんが確かに相関はあります。特に、リトアニア以上の検査数の国を除くと、回帰直線の傾きは0.0034(図の黒い破線)で相関があるように見えます。ただし、決定係数は0.16ですから、死亡数を増やす大きな要因が他にあって、検査数によって説明できる割合は20%以下です。さらに、リトアニアより検査数が多い国を加えて回帰分析すると、傾き0.00066(図の黒い実線)に低下します。決定係数0.023ですからほとんど意味のない相関になります。検査数を一定以上増やすと、検査数を増やすことのマイナスを相殺するぐらいの効果が表れるかもしれません。

しかし、検査数が多く国民の14%PCR検査を行ったアイスランドでさえ、わが国よりも人口1,000,000人当たりの死者数は多いのです。さらに、8%の国民を検査したルクセンブルグは50倍も死者数が多い。これも事実です。大量の検査を行うとともに行動の抑制など同時に適切な対応策を行えば、死亡率を下げ死者数を少なくすることが可能かもしれませんが、それには、少なくともリトアニアのレベル(人口の6%)の検査を行わなければなりません。この数は、韓国の検査数の5倍であり、我が国の検査数の60倍です。今すぐ我が国の検査数を60倍に増加するという議論は現実的な議論ではないし、それによって、死者数を減らすことが出来るかどうかも不確かです。

テレビ・新聞は、事実を全く見ないでおかしな観念論を振り回しています。典型的なのは、韓国の検査数が国際的に飛びぬけて多く、それによって、コロナ肺炎の蔓延を効果的に防いだという主張です。とんでもない事実誤認です。韓国の検査数は、フランス、オランダ、スエーデンと同じぐらいです。しかも、フランスを除いて、すべての医療崩壊国、準医療崩壊国は韓国よりも検査数が多いのです。韓国にも優秀な専門家はいます。韓国は途中で検査数を抑制しています。おそらく、途中でこの事実に気が付いたのです。もし、韓国を見習えと言うならば、韓国を手本に検査数を抑制しろと言わなければなりません。そして我が国はすでにそれを実践しています。

病床数にもよりますが、データによれば、1,000,000人当たりの陽性者の数が2,000人を超えると、全国的に医療崩壊の危険性が出てきます(部分的には今でも起きているでしょう。)。これは重要な数値です。現在、日本では陽性者の数は102で、危険水準の20分の1です。国際比較すると日本はコロナ肺炎の抑え込みに成功した国です。1,000,000人あたりの死者数は韓国よりも少ないのです。別に政府の方を持つ気はありませんが、日本は感染抑制に成功している国の一つです。ただし、これは結果論です。未知のことに対しては手探りで有効な対策を見つけていくしかないからです。他の国と同じようにいくつかの失敗をしています。緊急事態宣言は遅すぎました。空港の検疫はズブズブでした。これが市中感染を招いたことは事実でしょう。しかし、批判を急ぐあまり、事実を無視してとんでもない議論をする態度は極めて非科学的で危険です。

感想:日本は大丈夫か。テレビなどの議論を聴いていると心配になる。調べればわかる事実を確認しないでとんでもない議論を展開している。国によって人口が違うのだから、一定の人口に対する検査数・感染者数・死者数で論じなければいけない。割合というのは小学校で習う算数だ。それもできないのか。わざとそうしているのか、わざとでなければ、もはや我が国は白雉化している。能力の低いい人を馬鹿にする気はないが、誰か間違っていると注意してやれ。また、最近、勝手にいろいろなモデルを作ってそれらしいことを言う人が居るが。理論モデルは、実際のデータに合わせてその妥当性・説明力を検証しなければならない。これをバリデーションという。実際のデータを手に入れなければならないので厳密なバリデーションは誰にでもできることではないが、少なくとも、今手元にあるデータとモデルが整合的であるかどうかぐらいは、自分できちんと確かめろ、どこぞの大学の名誉教授がこう言っているというのはやめてくれ。