平成28年3月26日~30日の日程で平成28年度日本水産学会春季大会が、東京海洋大学品川キャンパスで行われる。日程の詳細等は下記の大会ホームページで確認してもらいたい。http://www.gakkai-web.net/gakkai/jsfs/kaikoku/sympo.html

もちろん、従来からの研究もさらに充実して研究内容が深まっているが、今回のプログラムを見ると、水産学会の最近の変化が良くわかる。社会連携を含めて、水産研究者がより広い視点で研究を行おうとして行こうとする意志がうかがえる。もっとも、それがわかるのは、シンポジウムの題目である。ミニシンポジウム・増殖懇話会のシンポジウムまで加えると、8つのシンポジウムが企画されているが、「地下水・湧水を介した陸―海のつながり:沿岸域における水産資源の持続的利用と地域社会」、「三陸沿岸における水産業の復興と新たな水産人材育成―3大学連携三陸水産研究教育拠点形成事業の成果と今後の展望―」、「エリアケイパビリティーアプローチと漁村開発」、「世界と日本の資源管理:水産資源の今とこれから」、「水産資源の持続的利用と認証制度 —東京オリンピックで日本の水産物を提供できるのか?」の5課題は、従来の自然科学の枠組みを超えて、「学」と社会の連携が強く意識されており、企画者に従来の水産研究者以外の人物も加わっている。10年前には考えられなかった傾向である。また、認証制度に関するシンポジウムは、おそらく、若手研究者の提案によるシンポジウムであると思われるが、若手研究者が積極的にこのような提案をするという積極的な姿勢は大いに評価したい。こうしたシンポジウムでは、マスコミや大学生・高校生も含めて、是非、一般の人々も議論に加わって、より広い視点で水産学が語られことを期待する。
一般公演を見ると、社会科学セッションが、丸一日分のスケジュールで行われる。従来、水産の社会科学は、極めて小さな研究コミュニティーであり、計量経済学的な手法で研究しているごくわずかな研究者の発表の場と言う印象が強かったが、開発プロジェクトの専門家や社会心理の研究者なども加わり、従来の「水産研究者」の範囲を超えて発表が行われる。たとえば、資源管理についても、漁業者が自ら資源管理に積極的に貢献しようとするインセンティブの創出、放射能汚染への懸念を含めた消費者意識の調査、さらに、初等教育や一般社会に対する啓蒙などの話題もあり、ずいぶん「水産学」が変わってきたなと感じる。是非、一般の方にも、こういう発表について関心を持っていただきたい。
こうした変化は、東北大震災による被害と復興への貢献という動機が引き金になっているのかもしれない。そういう視点で見ると、福島県の水産試験場が他の研究者と連携して行った水産生物の放射能汚染に関する研究が4題ほどある。この問題について、福島の水産試験場は懸命に努力されているのだということがわかり、頭の下がる思いである。こうした努力を全国の水産研究者が強くサポートしていかなければならないと今更ながら強く思う。

高校生の発表はますます充実してきおり、頼もしい限りである。高校生の発表は、従来、自然科学的な発表が多く、生物クラブ的な活動の発表の場と言う印象だったが、水産加工・流通という社会学的な内容を含む発表(2029 志太の発酵文化で健康・長寿!~焼津水産業の新しい可能性:大石尚弘・須藤愛梨・佐藤翔(静岡県立焼津水産高等学校)、2038 [福井県産地域特産種アラレガコ]~市場性の高い加工方法の検討:大平拓己(福井県立若狭高等学校)、2042宮城産ホヤの販路拡大に関する一考察~愛媛県宇和島市における試食塩梅活動を通じて:浅野陸・桜井空(宮城県水産高校)、2050~水産職人に関する研究と開発:星野澪・渡辺雛子・穂坂夏海(神奈川県立海洋科学高等学校)、2057海洋高校生による持続的な6次産業構築モデル:三澤甲斐・福島柊介・嶋田幹哉・木村克哉(新潟県立海洋高等学校))もあり、地元の水産加工業・漁業用同組合などにも、こうした高校生の研究を支援していただき、産業化への可能性を示すことによって、高校生の研究心・向上心を高めていただきたいと思う。また、高校生の発表の魅力の一つは、子どもならではの自由な発想による研究だが、2040 金魚すくいの技:加藤舞・土橋励起(東京農業大学第一高等学校)、2041 金魚の性格について:小林美空・猪股花音・小林涼菜(東京農業大学第一高等学校・中等部)、2055 カメの学習行動:井田深月(群馬県立高崎女子高等学校)など、楽しそうな研究発表もあり、是非、彼らと会話を楽しみたいと思う。
このように高校生発表が充実してきたのは、指導される先生方のご努力によるものと思われるが、極めて技術的に高度な研究もあり、水産試験場はじめ地元の研究機関等の協力もあるのかもしれない。こうした自主研究が、高校生の学習意欲・能力・人格形成にどのような効果を持つのか、機会があれば、そのような教育を実践されている方々にも、その教育効果について、水産学会でご発表いただきたいと思う。