PNASの記事を紹介したついでに、たまたま最近書いた原稿にその具体例のようなことを書いたので、紹介します。
本文は、かなり長く、全体が掲載されるのは、秋以降になります。出版されたら、また紹介しますが、以下は下書き段階の原稿の一部です。

写真2,3は2013年の東京大学5月祭の写真である。岩手県大槌町と宮城県浦戸諸島から漁協婦人部の方たちを招いて、ホタテ貝とカキを焼いて屋台で売っていただいた。屋台の名前は「東北のおばちゃんのさかな屋さん」である。屋台には長蛇の行列ができて、大変な盛況であった。並んでいる人たちの中には、「本当に東北のおばさんが焼いているんだ。」と嬉しそうに言っている人が多くいた。人気の理由は、震災後の生産力に余裕のある海面で作られた大ぶりのホタテやカキそのものの価値ももちろんあったが、地元のおばさんが調理しているという彼女たちの価値も少なからずあったのだと考えられる。また、参加した女性たちも、自分たちが生産し調理した水産物が、大変な人気で売れることを知りとても喜んでいた。5月祭に大槌から参加した漁協婦人部の女性は、私たちが 大槌で行っていた「おさかな研究会」の会員でもある。彼女たちは、「協創事業」のメンバーでもあるプロの料理人の指導で、魚のさばき方を練習した。船上生け締めなど極限まで 鮮度を追求した下ごしらえを現地で行い、それを東京の割烹料理屋などに直販の形で販売することを想定してこの研究会を作った。5月祭に参加してもらったのは、彼女たちに、自分たちが作ったものを、美味しいと感じて、喜んで食べる消費者の顔を見てもらいたかったからである。彼女たちは、大槌の美味しい水産物が全国的に価値のあるものであると納得し、それを提供する自分たちの存在価値にも気づいたはずである。「ニュー番屋」は実現しなかったが、地域の環境・資源・文化の潜在的な価値を認識し、それを顕在化させる自らの存在価値に目覚めて、積極的にそれらを発信することに興味と喜びを感じる女性たちが生まれたことは確かである。