某大学に頼まれて、大学・大学院での文理融合的教育について講演した。前世紀の終わりごろから、こういう分野横断的な研究分野や教育の必要が唱えられて、いろいろなところで、分野横断的な学部、学科、教育コース、プログラムなどが作られている。最初のころは、そのうち飽きるだろうと思っていたのだが、まだそのような流れは続いている。文科省や教育関係者は、大真面目にそういう教育・研究が必要だと思っているのだろう。何故そういう研究や教育が必要なのかという解説のようなものは聞こえてこないわけではない。そういう説明に納得できないわけではない。一方、従来から大学などで行われてきた狭い領域での尖った研究もまた必要である。大学とはそういう研究・教育が得意なところである。研究の世界では、研究の必然的な流れから新しい分野が生まれたり、いくつかの研究分野が融合したりするのは自然におこなわれるから、研究的には無理にそんなことを意識する必要はない。問題になるのは教育の方だろう。分野横断的な判断力が問われるのは実社会の方であり、こういう能力は経験によって培われるものだから、教育の場としては実社会の方がはるかに優れる。だから、何故、大学でそういう教育を行うことが必要なのかという疑問が出てくる。それについても、社会や企業内での教育力の劣化のような理由が上がられる。そうなのかもしれない。
今回、感じたのは、そのような教育を現にやっている人たちの悩みである。理念もさることながら、どんな教育目標を掲げて、大学の中でどのような教え方すればよいのか、戸惑っている感じがする。Problem based learningなどがその手法なのだろうが、大学教員の多くは、旧来の教育方法で学んできたのであり、手法の詳細を知らない。やるならば、そういう教育のマニュアルのようなものが必要だろう。